相続税申告に必要な書類❷
◇不動産の相続にあたって
今回は、前回に引き続き、相続税に必要な書類の中でも、不動産を相続した場合に求められる書類に焦点を当てたいと思います。
不動産とは、土地と建物を意味します。つぎの項では、それぞれについて必要となる書類を列挙します。
その前に、不動産の評価について、簡単に述べておきます。土地と建物では、評価が異なります。また、土地の評価には2つの方法があり、その土地が「倍率」と「路線価」のどのによるかは、国税庁によって決められています。一般的に、都市圏の中心地は「路線価」による評価が多く、農村部山間部などは「倍率」による評価が多くなっていると思われます。建物は、原則として、固定資産税による評価をそのまま適用します。
それでは、土地の評価の二つの方法について概説します。
まず、「倍率」というのは、国税庁によって固定資産税の評価額を何倍にすると決められている方式です。そのほとんどは、「1.1」倍または「1.0」倍となっています。固定資産税の評価額さえわかれば、国税庁の指定した倍率をかければ、相続財産の評価額を求めることができます。
たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の土地の倍率が「1.1」とされている場合には、その土地は1,100万円の評価額となります。
つぎに、「路線価」によってその土地を評価する方法ですが、これも国税庁が「倍率」以外の土地について、その土地が面する路線(道路)に価額を付してあります。この価額(路線価)は、土地1㎡当たりの価額を示すものです。
たとえば、路線価額が50,000円の100㎡の土地であれば、相続税の計算上、500万円の評価となります。ただし、その土地が歪(いびつ)な形をしていたり、間口が狭くうなぎの寝床のような形の土地であったり、傾斜がついていたりするときには、相続財産の評価額は下げられます。逆に、その土地が2片に道路が面するような場合には、相続財産の評価額は上げられます。
また、相続財産として土地の評価をするにあたっては、公図による面積ではなく、実測が求められます。
このように、土地に対する相続税の計算は、専門家にとっても容易な作業ではありません。
◇土地を相続される方が求められる書類
①登記簿謄本(全部事項証明書)【法務局】
その土地の地番・種目・面積・権利関係(特に所有権)を確認します。
②地積測量図または公図の写し【法務局】
その土地の地番・形状を確認します。
③固定資産税評価証明書【市(区)町村役場】
その土地の固定資産評価額を確認します。
④住宅地図ゼンリン(写し)
その土地を実測するために、位置を確認します。
⑤名寄帳(固定資産課税台帳)【市(区)町村役場】
被相続人(亡くなった方)が所有する同一市(区)町村内にある不動産を確認します。
⑥農業振興用地域…農用地区域内である証明書〔農地のみ〕【市(区)町村役場】
農用地区域内とされている土地とそれ以外の土地では、倍率が異なるので、この区別を性格にしなければ、正しい土地の評価はできません。
つぎに、土地の賃貸借をしている場合にはつぎの書類も用意してください。
①賃貸借契約書
借地権がある土地は評価が下げられます。その割合は、国税庁が路線価図に定めています。
②所得税等の確定申告書(前年分)
準確定申告の作成資料とします。また、所得税の還付金の未収があれば、これを相続財産に加えなければなりません。
そして、被相続人が小作をしてみえた場合には、つぎの書類が必要となります。
①農業委員会による証明書【市(区)町村役場】
小作権は、相続財産の評価に影響を与えます。
このように、土地の評価は細心の注意を払って正確に行われなければ正しい相続税の申告ができません。前項で簡単な評価をしましたが、実際にはそれほど単純な計算で片付くものではありません。このように、不動産を相続される方が必要となる書類は、市役所や法務局で入手するものがたくさんあります。
◇建物を相続される方が求められる書類
①登記簿謄本(全部事項証明書)【法務局】
その建物の地番・面積・権利関係(特に所有権)を確認します。たとえば、借地権や配偶者居住権が設定されている場合には、評価に大きな影響を及ぼします。
②固定資産税評価証明書【法務局】
その建物の固定資産評価額を確認します。特別な理由がなければ、一般的にはこの固定資産税の評価額を相続財産の建物の評価額とします。
③請負工事契約書・売買契約書
その建物の取得価額を確認します。
④設計図(間取り図等)
その建物の概要を把握します。
⑤住宅ローン返済計画表など
その建物の負債の額を確認します。
⑥名寄帳(固定資産課税台帳)【市(区)町村役場】
被相続人(亡くなった方)が所有する同一市(区)町村内にある不動産を確認します。
つぎに、その建物が賃貸借されている場合には、以下の書類もご用意ください。
①賃貸借契約書
賃貸借の事実を確認し、賃貸料を把握します。
②所得税等の確定申告書(前年分)
準確定申告の作成資料とします。また、所得税の還付金の未収があれば、これを相続財産に加えなければなりません。
これまでに述べてきたように、基本的に建物の評価については、固定資産税評価額をそのまま適用します。このため、土地とは異なり、実測をしたり、評価額を加減算するようなことは考えなくてもよいと思います。こういった建物の評価額を算出するのに土地の評価と異なるところです。
◇相続でお困りなら…
以上のように、土地の評価には、たくさんのルールをよく理解した上で慎重さが求められると思います。
また、相続対策は、お亡くなりになる前からしっかり対応しておくことが肝要です。お亡くなりになってからでは、財産の分け方に工夫をするくらいで、あとは淡々と財産を計算することが主な仕事になります。お亡くなりになる前に、
・相続税がどれくらいかかるのか?
・どうすれば遺された親族が仲良く過ごすことができるのか?
・何をやっておけば、節税になるのか?
などなど、生前にしておかなければならないことがたくさんあります。
いわば「相続に対するコンサルティング」を受けて専門家の力を借りることが、最も効率よく、誤りを少なくする方法だと考えられます。とすると、その専門家に最も当てはまるのは税理士だと思います。ところが、すべての税理士が相続税の申告を取り扱うとは限りません。まして、相続に関するコンサルティングを手掛ける税理士は珍しいと思います。
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相続対策は、ご自身の意思をお伝えになるためにも、生前からしっかりと行うことをお勧めいたします。もしどこに行けばよいのかおわかりにならなければ、当事務所にお声がけください。きっとお役に立つことでしょう!